外科・整形外科
SURGERY ORTHOPEDICS
外科について
外科は骨折、外傷、腫瘍疾患や内臓疾患に対しての手術、去勢・避妊手術などを行います。代表的なものとしては腫瘍性疾患や腸閉塞、臍ヘルニアや会陰ヘルニア、膀胱結石や子宮蓄膿症などがあり、幅広い部位の手術に対応しています。
外科手術は全身麻酔下で行う事が多いので、メリット・デメリットを提示し飼い主さんと相談した上で治療を実施しています。
整形外科について
当院は整形外科に特に力を入れています。骨折、脱臼、骨の歪み、関節などに関連する症状が現れましたら、当院へご相談ください。
こんな症状のペットが
来院されています
- 歩き方がおかしい
- 手足に触られるのを嫌がる
- 抱くと痛がって鳴く
- 足を引きずっている
- ケンケンすることがある
- あまり遊びたがらなくなった
- 歩くスピードが遅くなってきた
- 寝ていることが多くなった
- 活発さがなくなってきた気がする
前十字靭帯断裂
前十字靭帯断裂は犬の整形外科疾患の中で最も多い疾患です。多くは大型犬から中型犬に発生しますが、小型犬でも発症することがあります。前十字靭帯断裂は人では運動中に損傷を受けますが、動物では外傷よりも、変性によりロープが切れるように徐々にダメージを受け、断裂してしまいます。
初期の段階は、①ごく軽度の跛行、②お座りが完全にできないで足を投げ出す、③段差を躊躇するなどの軽い症状ですが、その症状が完治せずに続きます。この時期には前十字靭帯の線維の一部が断裂し、滑膜炎が進行していきますが、完全に診断できないことが多くあります。
前十字靭帯が完全に断裂すると、犬は多くの場合後肢を完全に挙上するほどの症状を出します。膝からクリック音が聞こえることも有り、この場合は半月板が損傷している可能性があります。前十字靭帯断裂の診断には、整形外科的触診による膝関節の不安定、 膝関節の腫れ、関節液の貯留、レントゲン検査などの所見を総合的に判断し、最終的に直接目視で観察する必要があります。MRIや超音波検査も診断に役立ちます。
治療方法
治療方法は外科治療が第一選択です。膝の不安定性は外科手術でのみ治療することが可能で、早期に治療することで関節炎の進行を遅くすることができます。。しかし他の疾患による二次的な十字靭帯断裂、全身状態に対して不安がある場合は、保存的治療やリハビリテーションでの治療を行うこともあります。
手術方法
前十字靭帯の治療方法は非常に多く、世界中で様々な治療方法が開発・研究されており、代表的なものとして関節外安定化術と脛骨骨切り術の2つがあります。
■関節外安定化術
当院ではこの方法を用いて手術を行なっています。比較的安価で、手術手技が容易であることから、関節の外で膝を安定化させる”関節外法”が前十字靭帯断裂の手術の中でも最も行われている方法です。しかし安定化に使用する糸の緩みか゛早期に起こるという合併症が多いため、これに代わる多くの手術か゛現在も開発研究されています。
■脛骨骨切り術
脛骨骨切り術は脛骨の角度を調節することにより膝関節にかかる筋肉の力を変化させて前十字靭帯断裂により引き起こされる脛骨の前方変位を中和し、膝を安定させるというコンセプトの治療方法です。この方法も多くの手技が開発されており現在も研究が続けられています。
その中でもTPLO (脛骨高平部骨切り術)と TTA(脛骨結節前進化術)か゛最も多く行われている方法です。これらの手技は関節外法と比較し早期の回復が望まれ、その安定度や回復は関節外法よりも優れているとされています。
関節炎の治療が必要です
前十字靭帯が断裂した場合、程度は様々ですが徐々に関節炎が進行します。関節炎の治療は鎮痛剤の投与、関節サプリメントの投与などがよく行われております。これらはもちろん効果があるのですが、実は体重の管理が最も重要です。ある報告では、体重の減少は鎮痛剤の投与と同じくらい生活の質を改善したと言われています。逆に言うと、体重が重すぎると関節炎の症状が悪化する可能性があります。体重過多の場合は減量プログラムをかかりつけの動物病院で作ってもらい、積極的に減量する必要があります。
前十字靭帯の断裂を起こした50%前後の犬が逆の足でも断裂を起こします。これは数日から数年で起こることがありますので、同じ症状が出た時はすぐに動物病院を受診してください。
膝蓋骨内方脱臼
膝蓋骨(しつがいこつ)は”膝のお皿”と言われている小さな骨です。膝蓋骨は骨盤と大腿骨から始まる大腿四頭筋に繋がり、更に膝蓋腱で脛骨とつながっています。これらは膝を伸ばすのに重要な役割を果たしています。
膝蓋骨内方脱臼は特にチワワ、ヨークシャテリア、マルチーズ、パピヨン、ポメラニアン、柴犬などの犬種に多く、1歳になる前から症状が見られる事が多いです。以下にあるような症状がある場合は、症状がすぐに改善する場合でも精密検査を受ける必要があります。
足を急に挙げ、スキップのような歩き方をする。その後自然に良くなる
膝蓋骨脱臼で最もよく気づかれる症状です。膝蓋骨が大腿骨の溝から脱臼することによって骨同士がこすれ合う痛みや違和感で足を挙げます。この後しばらくすると膝蓋骨が自然と元の位置に戻り、足も正常に戻ることが多いです。後ろ足を伸ばして元の位置に戻そうとする犬も多く見られます。このような症状は比較的軽い状態の時期にみられ、時間の経過とともに減少していくことが多いです。しかし実は膝蓋骨脱臼は良化しておらず、常に脱臼した状態へと悪化していることが殆どです。
足がO脚気味である。足先は内側を向いている。
膝蓋骨脱臼が慢性化し、脱臼したまま膝蓋骨が落ち着いている状態です。この段階では膝蓋骨と繋がっている大腿四頭筋は短縮し、膝蓋腱の付いている脛骨は引っ張られ内側に回旋します。このような状態になると膝を完全に伸ばさず歩行するようになります。膝蓋骨が完全に脱臼している状態は非常に膝に負担がかかり、後に前十字靭帯が切れてしまう犬もいます。
治療方法
基本的には外科的治療でしか完治はしません。グレード2以上は手術の適応となります。膝蓋骨脱臼の治療には、骨の形態的な異常、周りの軟部組織の異常、筋肉の異常などを総合的に矯正をしていかなければなりません。その異常の程度は様々で、矯正が必要な場所、方法はそれぞれ異なります。それゆえ手術の方法は慎重な検査のもと決定しなければなりません。通常この手術に慣れている外科医が手術をすれば90%以上は術前より改善します。
- 滑車溝形成術
- 大腿膝蓋靭帯形成
- 関節包リリースと縫縮
- 脛骨結節転移術
- 変形骨切り術
- 脛骨抗内旋術
保存的治療
減量、滑らない床、段差の少ない環境、ボール運動の禁止などは膝蓋骨脱臼の軽減に役立ちますが、これだけでは改善しない事が殆どです。しかし外科治療と同時にこのような環境の整備を行うことは重要となります。
膝蓋骨脱臼の治療の目的は、この先の歩行機能を守る事です。膝蓋骨脱臼の最も重要な弊害は、大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋靭帯の全てが異常な位置に移動し、徐々に後肢が正常な機能を損なうことです。つまり、早い時期に治療することで筋肉や骨の変化を最小限にする事ができ、治療の成功率も上昇します。特にかなり若い時期での脱臼は骨の変形も伴うので、早期の治療が必要です。
その他整形外科領域の疾患
橈骨尺骨骨折
橈骨尺骨骨折は前足の骨折(橈骨と尺骨)のことで、小型犬(トイ犬種)に多くみられる病気です。この病気は私たち獣医師の悩みの一つで、小型犬では骨が異常に細いため、下手に扱おうものなら血流を損ない、癒合不全(骨がくっつかない)を起こしてしまうことがあります。当院では外科的治療に力を入れており、これまでに多くの手術を経験しています。
股関節形成不全
股関節形成不全は発育性の異常で、ゴールデンレトリバーなどの大型犬に多くみられる病気です。原因としては遺伝的な要因が強いと言われますが、稀に骨の栄養関連、運動などの環境が原因の場合もあります。通常は両側性に発症します。
症状として「後ろ足のふらつき」「両後ろ足で同時に地面を蹴るように走る」「腰を左右に大きく振るように歩く」などがあります。
外科・整形外科の設備機器
・手術風景
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レントゲン撮影装置
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レントゲン
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整形外科手術器具
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整形外科手術器具
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整形外科手術風景
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歯科手術風景