
セミナー報告(小型犬の整形外科疾患の診断・治療編)
[2016年07月25日]
またまたセミナー報告です。
先月27日に行ってきた、
「小型犬の整形外科疾患の診断・治療」です。
このセミナーも日本を代表する獣医整形外科医達が講師となり行われました。
セミナーは大体そうなのですが、今回も朝から晩までお勉強でした
大まかには、
①前十字靭帯断裂
②膝蓋骨内方脱臼
③橈骨・尺骨骨折
④レッグ・ぺルテス病
という内容です。
どれも小型犬に多いのですが、特に②~④はほぼ小型犬の疾患です。
①前十字靭帯断裂ですが、これは肥満犬や活発な犬に多く起きる病気です。
ということは、外傷が原因なのかと思いきや、そんなに単純ではないようで、
加齢性の変化や、解剖学的要因、遺伝的素因、感染性、免疫介在性、内分泌性などに
外傷(ストレス)が加わり断裂が起こるようです。
断裂後の流れとしては、
断裂→関節の不安定性のため滑膜炎と骨棘形成→半月板損傷→疼痛・関節機能低下
というようになります。
半月板が損傷すると手術にて切除しないかぎり跛行が治りません。
また、関節炎の進行も加速し可動域が減少、跛行がずっと続きます。
そして、症例の60~80%は逆側も同様に断裂すると言われています。
自分の経験では、前十字靭帯断裂の手術をし、退院時に車に乗る際に段を踏みはずし、
逆側が断裂した症例を見たことがあります
両側が同時期に断裂すると悲惨で、後肢が麻痺したかのように起立できず歩行もできません。
なるべく早い外科手術が必要となってきます。
②膝蓋骨脱臼です。これは以前のブログで書いたので、簡単に触れる程度にします。
膝蓋骨脱臼ですが原因としては遺伝的要素が最も重要です。
小型犬だからみんななるわけではありませんが、小型犬に多いのは事実です。
”跛行なく歩くことができるから正常”ではありません。
転ばぬ先の杖ではないですが、足の骨が湾曲する前に外科的整復をした方が良いと思います
③橈骨・尺骨骨折です。
小型犬においてはソファーから飛び降りただけで起こる骨折です。
比較的難易度の低い手術ですが、キチンと治療をしないと治らない可能性の高い病気でもあります。起こる可能性のある合併症は、
1.癒合不全(くっつかない)
2.変形癒合(曲がってくっつく)
3.癒合遅延(治るのが遅い)
です。治療法の選択肢は色々とありますが、
どの方法でも原理原則に沿って行えば合併症は起こりにくいです。
手術は整形外科に慣れた病院で行うことをお勧めします。
④レッグ・ぺルテス病
これも小型犬の成長期によくみられる病気です。
大腿骨の骨頭部に虚血性の壊死を起こしてしまい、
ひどい跛行がみられます。
治療ですが、これまでは痛い骨頭部分を切り取る大腿骨頭切除術が主にやられてきました。最近になって治療の選択肢が増え、大腿骨頭回旋術および股関節全置換術という方法も選択可能になりました。
ただ、どちらも実施できる施設が限られているため選択しにくいのが実際です。
それぞれの利点・欠点を理解し、そのうえで選択をすることが必要となります。
その際はご質問ください。
以上です。またまた文章ばかりで長くなりましたが、お付き合いありがとうございました
それにしても今回も文字ばかり・・・
次回こそは写真を入れようと思います